与謝野町滝地区、176号の国道沿いには鳴滝神社という頭痛の神様を祀る神社があり、その横を上がっていくと、かつてニッケル鉱山であった山に繋がっています。
しかし、現在では人が山に入ることは少なくなり、荒廃した山となってしまいました。毎年訪れる台風被害により、横に流れる滝の水路のルートが変わってしまって道路に流れ出るなどの影響や、鳥獣害による被害も起きはじめていました。 2012年の春、「その山を設計してみないか?」と滝区グラウンドゴルフ場管理会の東垣和夫さんをはじめとした地域の方々声を受け、ランドスケープ(公園設計)に興味のある京都工芸繊維大学の当時3回生だった長谷川大喜を中心に複数の学生で山守プロジェクトは動き出しました。
当初は興味本位で進めており、公園や山道がまさか出来ていくとは思っていませんでした。公園設計は大学での専門(デザイン経営工学:建築やオフィスデザインなど)からは少し外れていたので知識がなく、どのように山の計画を作り、どのようなスパンで進めていけばよいのか分かりませんでした。一緒にプロジェクトを進めていく上で、東垣さん(地域の方)に絵を書いてきて欲しいと言われたので、この山にあったらいいものは何かというイメージスケッチばかりを書いて提案していました。
しかし、それは絵じゃないと言われ、東垣さんの思い描く絵(=図面)ということが後に分かってきました。話が噛みあわずにいるなか、試行錯誤しながら話し合いを重ねていくなかでだんだん公園設計の手順やどこに道を作るかなど半年かけて見えてきました。
—その2 山に入ってみる、触れてみる、知っていく(2012年春〜秋)
この山に定期的に人が足を踏み入れることが、今山が抱える問題を解決するのではないかと考え、「山と人を繋ぐ」をコンセプトにし、この荒れている山にランニングや自転車コースに使える道を作るというハード面の提案から、考えはじめることにしました。地域で長年、造園業を営まれている吉岡晋弥さんからアドバイスを頂きながら、何度も山に足を踏み入れ、歩き、実測し、山の状態を調査していきました。その山をコンタ模型に落とし込み、山道のそれにまつわるソフトなアクティビティのイメージを学生、地域住民、造園関係者の方々とで何度もミーティングを重ね、膨らませていきました。
僕たちは、吉岡さんと、実際に山に道が出来ていく過程を考え、つくっていく中で「人間の手で地形をかえること」を目の当たりにしました。そんなことを知っていくなかで、市内に帰ってきてからも様々なものへの感じ方が変わっていきました。実際に、鴨川を歩いていると、いままで何も感じなかった鴨川とは違い、地形を感じ、人の手からできた自然を地形から気づかされることが増えました。そこから僕自身は、植林や風景をつくることに興味が湧きました。
山守プロジェクトを進めていくと、自分が思い描いた風景を山につくり、春になります。そうすると、桜が山中に咲き誇り、その時に地域の人達は「あんなところに桜咲いてたかな?」と風景に興味を持ち出します。普段の山に興味がない地域の人達も僕が考えた風景をみて興味をもちだしたら、しめしめと思います。公園設計を実際に行うことでそういったところまで踏み込めるという面白さがここにはあると感じています。
—その3 道が出来ていく、人が山に入る仕組みを考える(2012年秋〜現在に至る)
地域住民、学生の声を取り入れた山を一周できるコース取りが決まり、施工が始まりました。 次に私たちが考えていかなくてはならないのは「どうしたら人が山に入りやすくなるのか」ということです。そこで、毎日の運動・健康維持のためのコースとして利用出来るように、様々な筋肉を鍛えることができ、かつ休憩用のベンチとしても利用出来る「筋肉ベンチ」を提案・制作しました。
また、大人だけでなく子どもも遊び、疲れたら昼寝が出来るような場所として山の利用を提案し、山中でのワークショップを実施しました。(2013年夏)
—その4 いろんな人に継がれていく、長く愛される山になる
残念ながら学生は4年間で卒業し、地域の役員は1〜数年間で任期を終えます。しかし、山の計画し、寄り添っていくことは、1〜2年という短期活動では終わりません。「山と人を繋ぐ」というコンセプトのように、日々様々な人に活用され、愛されることで、荒れた山ではなく、これからの山として守られていくことが大切です。現在、当時3回生だった長谷川くんから現在京都工芸繊維大学4回生の村重くんへと山の設計計画は引き継がれ、滝区の区長は交代され、安田武明さんが就任されました。 この計画がはじまって今年で3年目。様々な人に引き継がれ、これからも人が山に入っていける仕組み作りを考えていきます。
—その5 例えば、こんな提案
与謝野町滝地区を中心とした地区では、スポーツが盛んで、子どもたちは土日には、野球かバレーボールの試合があります。そんな地区にもっとスポーティになれるような遊びとして自転車で山を下るコースを作ろうという提案もちらほら出始めています。
Xキャンプでは、学生が敷地でなにか計画するだけでなく、実現、実行するところまでを地域の方や専門家(造園家など)と話し合いをしながら、行っていきます。山を通してなにかしてみたい人はぜひ連絡下さい。 白紙の上に道をひくようなところから始め、山を歩いて計測しながらその道はどこに位置しどんな道かを図面にひいていきました。その道ができ、その道を中心に広場や、その広場でなにが出来るのかなど様々なアクティビティを考えていく山守3年目。頑張りさえすれば、なんでも出来ます。ぜひ一緒に山の風景を考えましょう。
【山守参加メンバー】
○京都工芸繊維大学
・デザイン経営工学過程
長谷川大喜/村重悠太/和田両磨/野々海/小島玄久/山本昌城/橋本真実/島田慎也
・造形工学過程
黒田香澄
○嵯峨芸術大学
・短期大学現代アート領域
片岡千晶
・生活デザイン系スペース領域
平野木綿子
・生活デザイン系プロダクト領域
山田優子
・イラストレーション領域
入江真悠子
○京都大学
・工学部建築学科
藤田麻由美
・理学部
金井潤一
○近畿大学
・建築学部
湯ノ上純
○帝塚山大学
・居住空間デザイン学科
長澤亜優美
○大阪市立大学
・生活学部移住環境学科
松井彩恵
○京都造形芸術大学
・芸術学部環境デザイン学科
伊佐治美穂
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