2014年5月1日木曜日

食守。地域の食の美味しさを知り、様々な世代へ広げていく。

—その1 「この地域には特に郷土料理はない」という一言。

  与謝野町のある丹後地域では、昔から米をはじめとした農作物がよく採れ、米の食味ランキングにおいて最高の「特A」を得たコシヒカリの栽培をするなど、農業が盛んです。ですから町内に大きな農業生産法人が3社もあり、その内2つの法人(あっぷるふぁーむ、誠武農園)が私たちの活動地域である滝・金屋地区に存在します。また専業の個人農家も多く、それぞれのこだわりを持ちながら四季折々、様々な農産物を生産されています。
  農業風景

 しかし、豊かな農産業をもつ一方、地域の方々に話を聞くと「この地域には郷土料理がない」と口を揃えていいます。その一言を聞き、普段から美味しいものを食べることに関心のある京都工芸繊維大学の当時3回生だった松本翔太郎を中心に食守プロジェクトは始まりました。また、その一言から、地域に潜む潜在的な郷土料理や食文化を見つけるべく「食を探る活動」の1年目が始まりました。
  松本翔太郎


—その2 農家に弟子入りすること。生活から食文化をひも解いていく。

  まず、食材の旬を敏感に捉えながら与謝野の地域食を守っているのは農家であると仮定し、農家に着目しました。夏のキャンプイン期間を利用して地元農家に弟子入りし、毎日農作業の手伝いをし、昼夜飯などを一緒に頂き、生活を共にするなかで、この地域に根付く特有の味や生活から生まれる知恵などを探っていきました。(2012年)
  弟子入り

 僕は、奥滝という滝地区の中でも一番山の上に住む山本孝市さん・夏江さん夫婦の元に2週間ほど通い、主に、野菜の袋詰め作業を手伝わせてもらいながら、夏江さんの作る昼・晩飯を頂くことで、農家の食に触れました。それらは、農家にとって、「当たり前」であり、「日常的な食」です。その食に触れることで暮らしの知恵、例えば、山菜はあそこに行ったら採れる、ナスはこうやって煮たら美味しい…などです。そういった「ちいさな個々の日常食」をたくさん知りました。
  山本孝市家


—その3 郷土料理を身近に気軽に片手でどうぞ。

  1年目の「農家にとっての日常食」を探る活動をふまえ、2013年は「地域の食」を日常的なものとしてだけではなく、「特別な日」に頂く「丹後のばらずし」に着目しました。「丹後のばらずし」とは昔からハレの日や祭りの時などに丹後地方で食べられている、甘い鯖のおぼろ入りのちらし寿司のことです。そのばらずしを、日本人なら誰でも好きな「おにぎり」の形にし、手軽に美味しく食べられる形を作っていきました。
  ばら寿司おにぎり

 その作る過程を「みのり会」という、味噌作りなど、地域食について活動されている団体に所属されている和田さんや西原さんに意見を頂きながら、どこか懐かしいあの与謝野で食べる味を目指して改良を重ね、見栄えも試行錯誤しながら作っていきました。(2013年)
  ばら寿司おにぎり2

 この2年間を通し、個々の食卓で生まれる、家庭の味から与謝野に根付く伝統的なものを感じたり、おばあちゃん世代からお嫁さん世代へ「食文化の継承」があまり行われていないことも知りました。つまり、若い人の料理はどの家庭でも一般化されており、地域の食を知らないから、作れないという層も存在します。山本さんや和田さん、西原さんに教わった「ちいさな家庭の知恵」が、次の世代に薄れず伝わる形をこれからも追究・実践していきたいと考えています。
  話聞いてる


—その4 これからも地域の食や旬に着目する。

   夏の1ヶ月、地域の農作物や食に触れていく中で、初夏に採れる皮の柔らかいなすは、旬をすぎて次第に秋には皮が分厚くなり硬くなるという変化を見ることができます。普段、都市部で生活する私たちにとって、そのこと1つとってみても気づく機会はありません。食を大切にしている地域だからこそ気づかされることが往々にあります。毎日行う食事だからこそ、旬を舌で感じ、その地に潜在している食を考えることが出来ると感じています。
  なす

 野菜の旬や地域の食文化など一緒に見つけ、これからの食について考えて見たい人はぜひご参加ください。


【食守参加メンバー】

○京都工芸繊維大学
デザイン経営工学課程 松本翔太郎

○京都精華大学
人文学部総合人文学科 河田美琴

芸術学部テキスタイルコース 切東さや

○京都嵯峨芸術学大学
メディアデザイン領域 中村彩乃
短期大学部グラフィックデザイン領域 藤澤あや

○立命館大学
政策科学部 松本雄介

○京都大学
文学部 鈴木由李絵

○同志社大学
文学部英文学科 青木博之

○成安造形大学
芸術学部芸術学科 後藤美子

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